夢の言葉と約束の翼(上)【夢の言葉続編⑤】
”好きな人の傍にいるのに、何か理由が必要かしら?”……。
背後から聞こえた信じられない言葉に固まって、僕は振り向く事も出来ずにいた。
一瞬呼吸をするのも忘れて、辺りの音が何も耳に入らないくらいに静まり返る。
ミネアさんは、今なんて言った?
”好きな人”というあり得ない言葉を、自分は何と聞き間違えたのだろうと頭の中で巡らせていると……。
車椅子を止めたミネアさんが僕の正面にやって来て、顔を覗き込んで言った。
「おかしな質問をなさるのね。
わたくしは楽しいですわ!だって、大好きな人と一緒にいるんですもの。
マオ様といられたら、それだけで嬉しいです!」
初めて病室で会った時のように、眩しい笑顔でそう言う彼女に目を奪われて……。
また、僕は目が逸らせなくなった。
楽しい。大好き。嬉しい。
ミネアさんの言葉が心に響いて、彼女の素直さに導かれるように、僕も自然と浮かんだ疑問を口にした。