夢の言葉と約束の翼(上)【夢の言葉続編⑤】
年齢で言えば僕の方が十も年上なのに、いつもミネアさんにはこうして甘えてばかりだった。
もう少し大人の男というものを勉強しなくては……。と反省していると、港街にある時計塔が12時を知らせる鐘を鳴らし、今日の予定をふと思い出す。
午後から仕事が半休になったミネアさんと、この後舞台を観に行く約束をしていたのだ。
「ミネアさん、舞台って何時からでしたっけ?そろそろ移動しましょうか?
……。ミネアさん?」
声をかけてゆっくりと身体を動かそうとするが、ミネアさんは僕にしがみ付いたまま離れない。
それどころか、ますますギュッと力を込めて強く抱き付いてきた。
いつもと、様子が違う。
「ミネア、さん?
どこか具合いでも、悪いんですか?」
顔を覗き込んで様子を伺おうにも、ガッチリとホールドされて彼女の表情が見えない。
また僕をからかって、困らせようとしているのだろうか?
とも思ったが、この日の彼女はどこか違った。