夢の言葉と約束の翼(上)【夢の言葉続編⑤】
だから、俺にはギルの気持ちや事情が分からなくて……。
俺の言葉に一瞬表情を曇らせ、苦笑いのような笑みを浮かべたギルに疑問を抱く。
「ん〜……。
今日は、やめておくよ。持ち合わせがないからね!」
「!……っ」
”持ち合わせがないから”……。
そう言って宝石箱を切なそうにチラッと見て、その場を離れたギル。
その姿に……。
俺はなんて馬鹿な事を言ったのだろう、と。
酷い事を言ってしまったのだろう、と気付く。
ギルが見ていた宝石箱は、俺からしたらたった一回の報酬でも何十個と買える品物。
けれど、銀バッジでこれといって指名依頼のないギルには……とても高価な品物だったのだ。
自分が口にしてしまった失言に気付きながらも、謝れば余計にギルを傷付けてしまうと思った俺は、何も言えないままギルの後に続いて店を出た。