夢の言葉と約束の翼(上)【夢の言葉続編⑤】
もう、あの人は……。
きっとヴァロンで在って、ヴァロンではない。
別の人に、なってしまったのだ。
そう思って、諦めようとした。
私は母親だもの。
子供達を守らなきゃいけない。
きっとヴァロンも、それを望んでいる。
そう、自分に言い聞かせた。
彼が幸せに生きていてくれるなら、それでいいって……。
……。
でも、神様は意地悪で……。
運命は残酷なくらいに私に思い知らせるの。
彼じゃなきゃ、ダメなんだって。
……。
ふとレジからお店の出入り口のガラス戸を見ると、いつの間にか外は雨が降り始めていた。
梅雨の時期、今日は6月15日。
ヴァロンの師匠であり、想い人だったリディアさんの命日。
そう思い出した瞬間。
カランカラーン!と鈴が鳴り、お店の扉が開いた。
「!……あ、いらっしゃいませ〜!
……。え……っ?」
ハッとして声を発した私は、お店に入って来た人物を見て思わず口を手で押さえた。