夢の言葉と約束の翼(上)【夢の言葉続編⑤】
これは神様の意地悪。
……いや。
きっと、リディアさんのイタズラだった。
……。
突然の雨に降られ、雨宿りの場所を求めるようにお店に入ってきた男性。
それは、間違いなくヴァロンだった。
嘘っ……、どうして?
ドキンッと高鳴る鼓動。
黒に近い灰色の髪と瞳と、黒縁の伊達メガネ。
仕事中なのだろうか?
先日の私服とは違って、今日はビシッとしたスーツ姿の彼。
メガネを外して、雨に濡れた髪や服をハンカチで拭いている。
おかしい。
そんな彼の姿にでさえ、胸が弾む。
今にも涙が溢れそうな位に、愛おしさが溢れてきてしまう。
普通に接客なんて、絶対に出来ない!
私は彼に気付かれる前に奥に引っ込んで、レジ番を誰かに代わってもらおうと思った。
……のに。
「……あの、っ……。
ここのお店って……ホットミルクはありますか?」
控え目に尋ねてくる声。
大好きな彼に声をかけられたら、無視なんて出来なかった。