夢の言葉と約束の翼(上)【夢の言葉続編⑤】

「まぁ……。雨のせいでお客も少ないし、今日はもう上がっていいですよ。
明日からは気持ちを入れ替えて下さいね」

黙って俯きながら話を聞いていた私を見て、キツく言い過ぎたと思ったのだろうか?
時刻はまだ12時を過ぎたばかりだが、店長さんは少し優しい口調になるとそう言ってくれた。


「……はい。
お疲れ様でした。……」

勘違いしている店長さんに申し訳ないと思いながらも、この後元気に接客に戻る自信がなかった私は、お言葉に甘えて仕事を早めに上がる事にした。


事務所を出て更衣室で着替えると、従業員用の出入り口から帰ろうと扉を開ける。

外は、雨。
大粒ではないが、傘がなくてはけっこう濡れる感じの雨がシトシトと降り注いでいた。

子供達の保育所のお迎えまでは、まだ時間がある。
私は一旦自宅へ戻ろうと、鞄の中から折り畳み傘を取り出すと、さして帰り道を歩き出した。

……
………。
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