夢の言葉と約束の翼(上)【夢の言葉続編⑤】
……でも。
嫌いになれるはずなんて、ない。
幼い頃に出逢った彼。
召し使いとして、再会した彼。
夢の配達人としての彼。
恋人、夫としての彼に幾度となく惹かれたように……。
私は、また彼に恋をしてしまうの。
……。
曲がり角に差し掛かった私の瞳に映るのは、少し離れた軒下の片隅で屈んでいる男性。
男性は背を向けているのに、私には分かってしまうの。
どうして、見付けてしまうんだろう?
そう思うと同時に、”見付けた”と胸が暖かい鼓動をトクンッと鳴らした。
これ以上、距離も心も近付いてはいけないと思うのに……。
私の足は、自然と彼の方に向かって歩み出していた。
傘の持ち手を握る手に、力が入る。
彼の背から瞳を逸らす事が出来ず、一歩一歩その距離を縮めて行くと彼の声が聞こえた。