夢の言葉と約束の翼(上)【夢の言葉続編⑤】
「寒いよな?
……あ、そうだ!」
彼の言葉に、誰と話しているの?と疑問に思いながらも様子を伺う。
すると彼は「ほら、おいで」と、自分の正面にある小さなダンボール箱から黒い子猫を取り出し、脱いだスーツの上着で優しく包んで抱き締めたのだ。
「少しは、あったかいかな?」
不安そうに尋ねる彼に、腕の中の子猫は返事をするように「みぃ〜」と可愛らしく鳴いた。
……。
狭い軒下。
子猫が入っていたダンボールが雨をしのげるのが精一杯で、彼は相変わらず雨に濡れていた。
それなのに……。
「あ、僕が抱いてたら濡れてしまうね。
……これで、いいかな?」
彼はそう言って、子猫をスーツの上着に包んだままダンボールに戻すと……。
おそらく自分のものである折り畳み傘を、子猫の入っているダンボールに雨がかからないよう、さした。