夢の言葉と約束の翼(上)【夢の言葉続編⑤】

子猫の入っているダンボール箱の中には、サンドイッチ用のケースをお皿代わりにして注がれたホットミルク。

私のお店で購入したホットミルクは、この子猫の為だったのだと分かる。


高価そうなカッコいいスーツ姿なのに、上着を子猫に貸しちゃって……。
薄着なのに自分は雨に濡れて、ズボンの裾も靴も泥水まみれで……。

おまけに傘まで貸しちゃうなんて……。


どんな小さな命も平等に扱う。
自分の事よりも、いつも他人を気遣う優しい心。

私の、大好きなヴァロン。


「っ……ホント、バカだよ。……ッ」

思わず口から出た言葉と共に、私は距離を一気に縮めると自分の傘の中へ彼を入れた。


愛おしい気持ちが溢れ出して止まらない。

自分に降り注いでいた雨が傘に弾かれる気配に「え?」と驚いたように、顔を私の方に向けて見上げる彼。

その見た目も、雰囲気も……。
私を忘れてしまっている瞳も表情も別人のようなのに……。

私の心は、貴方が好きだと叫んでた。

……
…………。
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