夢の言葉と約束の翼(上)【夢の言葉続編⑤】
取り引き先への届け物を無事に終え、帰ろうと駅までの道程を歩いている時だった。
たくさんの子猫をダンボール箱に入れ道端で売っている、いかにも怪しい雰囲気の販売者達が目に付いたのは……。
関わるつもりはなかった。
ただ、駅へ向かうのに通っただけ。
けれど、すれ違い際に聞こえた言葉が僕の歩みを止めた。
「やっぱりコイツは駄目だな!
他の兄弟猫はみんな真っ白で可愛いのに、不気味な黒猫に産まれてきやがって!」
その言葉は、まるで自分に言われたように感じて……。胸に突き刺さった。
思わず横目でチラッと声の方を見ると、販売者によって乱暴に首根っこを掴まれた黒い子猫が「みぃみぃ」鳴きながら、暴れていた。
小さな子猫。
でも僕にはその子猫が、自分よりもはるかに大きい人間を相手に立ち向かっているように映った。
僕と同じ境遇に在りながら、僕には出来ない強さを持った子猫。
気付いたら僕は、販売者に声を掛けて、この黒い子猫を買ってたんだ。