夢の言葉と約束の翼(上)【夢の言葉続編⑤】
声を掛ける前までは”処分する”と話していたのに、僕が興味を持った事をいい事に高額で”譲ってやる”と言われた。
そこで持ち合わせがなかった僕は、腕時計と子猫を物々交換したのだ。
……。
知らないフリなど、出来なかった。
見なかった事になど、出来なかった。
でも、その後の事なんて全く考えていなかった自分を恥じる。
自宅に連れ帰り、腕時計と子猫を引き換えにしたと知られたら、祖父は怒鳴り怒るだろう。
いや、それだけで済めばいい。
祖父はあの販売者達と同じ考えの持ち主。
”飼う”という選択肢など与えてはもらえない。
かと言って祖父の目を欺いて、隠し通して飼う事も今の僕には難しい状況だ。
唯一相談出来そうな相手、ミネアさんの自宅にはメリーという愛犬がいる。
きっと、一緒に飼ってなんてもらえない。
他に信頼出来る人、なんて僕にはいない。