夢の言葉と約束の翼(上)【夢の言葉続編⑤】
療養。
そう、私が別荘に来たのは数日前に体調を崩し、職場で倒れてしまったからだ。
幸い大きな病などではなく、ただの疲労。
少し休めば大丈夫だと医師からも言われた。
だが、それと同時に限界も告げられる。
いくら若い頃からずっと続けてきた慣れた仕事とは言え、誰でも老いには勝てないもの。
年々、確実にキツくなってきていた。
同世代には皆息子や跡継ぎ候補がおり、世代交代への準備を進めながら徐々に身を引いて行くのが当たり前の年齢。
しかし、私にはそれがない。
一人息子のギルバートはすでに他界。
その娘であり、孫のアカリを嫁に出す事で跡継ぎを得ようと考えた事もあったが……。
「アカリ様に、ご連絡しなくて本当によろしいのですか?」
「いいんだよ、私はたいした事ない。
変に伝えれば心配させるだけだろう?
……それに。
あの子の方が、これからまた苦しい想いをするかも知れん」
ローザの言葉に首を横に振り、ベッドの横にある棚から雑誌を手に取る。