夢の言葉と約束の翼(上)【夢の言葉続編⑤】
〈回想〉

ヴァロン君が”マオ”としての長期任務を終え、アカリとまだ赤ん坊だったヒナタを迎えに来た時の事。

私の別荘から港街へ戻る前夜。
彼は一人で私の部屋に訪れ、酒に付き合ってくれた。


「さぁ、ヴァロン君。
どんどん飲んでくれたまえ!」

「……はい、頂きます」

私のコレクションの一つである地酒の数々。
仕事先で買ってきたり、私の酒好きを知っている者達からお土産に貰った宝物だ。

自慢の酒の瓶を目の前のテーブルに並べて上機嫌の私に、とても言えなかったのだろう。
後にアカリからヴァロン君は酒が全く飲めない下戸なのだと聞いた。

それなのに、彼は全く嫌な顔一つせず進めた酒を飲み干し、私が「お開きにしよう」と言う最後まで付き合ってくれた。


勿論、そんな彼も気に入った。
だが、私が認めたのはそれだけではない。
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