夢の言葉と約束の翼(上)【夢の言葉続編⑤】
【ローザ33歳/アルバート別荘】

「使用人長って、お綺麗なのにご結婚はされないのかしら?」

廊下の曲がり角に差しかかろうとした時、そんな声が聞こえた。


ーー全く、若い娘はそういう話が好きね。

心の中で溜め息を漏らしながら私が自分の存在をアピールするように「ゴホンッ」と咳をすると、それに気付いた若い使用人達はワタワタと散って行った。


誰にも語ってはいないが、私は結婚する気はない。
己の身を、アルバート様に託されたこの別荘の使用人長として一生捧げ終えるつもりだ。


そりゃあ、私だって若い頃はあったし、青春がなかった訳ではない。

それなりに裕福な家庭に産まれた私は暮らしに不自由はなかったし、教養にも恵まれ、将来は素敵なお嫁さんであり母親になるのを夢見ていた時期もある。

それは、17歳の時。
ずっとずっと大好きだった、幼馴染の彼との婚約が決まったのは。
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