夢の言葉と約束の翼(上)【夢の言葉続編⑤】
けれど……。
「何故私を、ここへ連れて来たんですか?
断るつもりなら、お見合い話が出た時に断れば良かったでしょう?」
気付いたら、私はそう尋ねていた。
多分私は、ショックだったんだ。
恋と呼べる感情ではないけれど、今日アルバート様が私に与えてくれた”優しさ”が亡き奥様への想いだと言う事が……。
そして、自分の親や親戚やアルバート様。
周りの大人達に転がされて、思惑通りにされてしまう自分にも、嫌気がさした。
結局大人達に振り回されて、私の想いなんて消されてしまうんだ。
哀しくて悔しくて。
絶望しかかった私に、アルバート様が答える。
「娘が産まれたら、”ローザ”と名付けたい。
それが妻の、もう一つの夢だった」
「!……え?」
「初めは、見合いなど断るつもりだった。
……だが。君の名前を聞いて、会いたいと思った。
他人事には思えず、勝手に運命を感じてしまったんだ」
そう言って、アルバート様は微笑った。