夢の言葉と約束の翼(上)【夢の言葉続編⑤】
垂れ目で、顔をくしゃっとして笑うその表情が、大好きな彼と重なる。
それは、間違いなく私に向けられたもの。
恋人というよりは、父が子へ向けるものに近いのだろうが……。私を大切に思ってくれている想いだった。
勿論、背景にあるのは亡くなった奥様との想い出もあっただろう。
でも、それだけじゃない。
私の気持ちを踏み躙ろうとした大人達とは違う。
「こんなおじさんに付き合わせて悪かったね。
だが、君に会って、笑顔にしてやりたいと思ったんだ」
大きな優しい手が、私の頭をそっと撫でた。
「……愛しい者を亡くすのは、辛いよな?
もう我慢しなくていい、君の心は誰にも奪わせない」
自分の問い掛けに、思い掛けない答えが返ってきて、呆然とする私。
でも、暖かい”何か”が満ちてくるのを感じた。
「ローザ、私の元に来てくれないか?
妻としてではなく、この別荘を取り仕切る使用人長として君を迎えたい」
「!……私が、使用人長?」
「今日君とこの別荘について語り合って、心からそう思った。
私と同じ”想い”で生きている君に任せたいとね」
アルバート様は、私の心を救ってくれた。
私の心を閉じ込めようとした人達から、救い出してくれた。