夢の言葉と約束の翼(上)【夢の言葉続編⑤】
「よかったら、預かりましょうか?」……。
そう尋ねると彼は驚いた表情をして、「本当ですか?!」って言って、私が頷くとホッとした表情を浮かべた。
優しい彼が、理由もなく子猫を放置したりするとは到底思えない。
何か理由が……。
例えば、まだこの後に仕事先に向かわなくてはいけないとか。何か理由があるのだと思った。
……。
そんな訳で、私は彼を自宅に招き入れた。
少し躊躇した様子だったが、彼は私に促されて玄関の扉を潜ると、控えめに「お邪魔します」と言った。
”お邪魔します”……。
その言葉が、また私を悲しくさせる。
この三年、”ただいま”と言う彼からの言葉を待っていた私には、辛い言葉だった。
胸の痛みを抑えながら私も玄関に入ると、待ってましたとばかりに「にゃ〜っ」と鳴きながら、奥の部屋から猫リディアが廊下を駆けてきた。
その姿に、私は何とか癒されて微笑む。