夢の言葉と約束の翼(上)【夢の言葉続編⑤】
「……猫ちゃん、飼ってらしたんですね」
屈んで猫リディアの頭を撫でる私に、背後に立っている彼が言った。
猫リディアは私に撫でられながらも、視線は彼を見上げている。
その様子を……。
警戒していない猫リディアを見て、思った。
彼が”ヴァロン”だと、分かっているんだって。
そして本当に賢いのか、警戒はしてないもののすり寄ってはいかない。
以前の様に、抱っこを強請って跳び付いたりはしない。
今の彼を、猫リディアは冷静に見ているように思えた。
だから私も、冷静になれた。
「リディア、ただいま〜。
今日はね、新しいお友達を連れてきたの。仲良くしてくれる?」
そう声を掛けて立ち上がり、彼の持つダンボール箱の中から黒い子猫を取り出すと、猫リディアの近くの床にそっと降ろした。
新しい場所で不安なのか、「みぃ〜みぃ〜」鳴く子猫。
大丈夫かな?と、ドキドキしながら見守っていると……。
猫リディアはゆっくり歩み寄って行って、子猫の匂いを嗅いだ後。優しくその頭を舐め始めた。