夢の言葉と約束の翼(上)【夢の言葉続編⑤】

「あ、あの……。
お風呂、ありがとうございました」

暫くして扉が開いたかと思うと、ものすごく遠慮がちに声を掛けながら彼が脱衣所から出て来た。

私が選んで用意した黒い細身のズボンと、深い緑をベースにした長袖シャツに身を包んだ彼は、三年前と全然変わらない。
まるでこれから私と出かける為に、変装してくれたヴァロンみたい。

元々彼の服なのだから当然なんだけど、とてもよく似合っていた。


「これ、旦那さんの服……ですよね?
僕が着ちゃって、良かったんですか?」

そんな事をつゆ知らず、そう尋ねてくる彼。
よく見るとまだ髪が上手く拭けておらず、毛先からポタポタと雫を垂らし肩を濡らしていた。


「気にしないで下さい。
て、言うか……。髪、まだ拭けてませんよ?」

私は側に寄ると彼が首に掛けていたタオルを手に取って、濡れている髪を拭いてあげる。

こういう事はヴァロンの方がしっかりしていた為、三年前では考えられなかった事だ。
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