夢の言葉と約束の翼(上)【夢の言葉続編⑤】

世話を焼いてくれたのは、彼の方。
お風呂上がりに私の髪が上手く拭けていないと、ヴァロンはいつも優しく拭いて乾かしてくれた。

まさか、こんな風に立場が変わるなんてね。


「っ……あ、の。
自分で、やりますからっ……」

この状況をほんの少し楽しんでいた私の行動に頰を赤らめた彼が、タオルを取り返して身体ごと少しズラしてそっぽを向く。

その行動は拒絶されたみたいで悲しかったが、変にしつこくする事も出来ない私はゆっくり離れようとした。


その時。
お風呂上がりで手袋を外していた彼の左手が、私の目に映る。


「……えっ?」

思わず声が漏れて、私は驚きのあまり凝視してしまった。

彼の左手の甲には、まるで何かがそこに突き刺さったような傷跡があったからだ。


「!……あ、っ。
すみません……気持ち悪い、ですよね?」

視線に気付いた彼は慌てて隠そうとしたが、私はさっとその手を取り、自分の両手で包み込むようにしながら傷跡をゆっくりと見た。
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