夢の言葉と約束の翼(上)【夢の言葉続編⑤】
「っ……ごめん、なさい」
その瞬間に我に返ると、パッと離れて涙を拭う。
余計な事を考えたり、思ったりしてはいけない。
深く詮索してしまえば、どんどん気になる事が増えて止まらなくなってしまうから。
産まれてからずっとずっと苦しんで生きてきたヴァロン。
彼がこの三年間で築き上げていた人生が、もし幸せな道に続いているのならば放してあげよう。
彼がまた迷って、悲しんだり辛い想いをしないように……。
私が、自ら身を引こうと思った。
それがきっと自分に出来る最後の事だと思って、私は声を弾ませて言う。
「ね?お腹、空いてませんか?」
「!……え?」
「お昼ご飯、簡単ですが用意したんです。
……一緒に、食べてもらえませんか?」
これが私の最後のお願い。
”やっぱり、アカリの作る飯が一番だな!”。
ヴァロンはいつも私の手料理を食べて、そう言ってくれた。