夢の言葉と約束の翼(上)【夢の言葉続編⑤】

「さっ、温かいうちに食べて下さい」

「!……あ、はいっ。いただき、ます」

声を掛けられてハッとすると、食卓に用意されていたスプーンを慌てて手に取る。


アカリさんが作ってくれた昼食はオムライスにスープにサラダ。
ふわふわに焼かれた玉子が乗ったケチャップのオムライス。
玉ねぎが入ったコンソメスープ。
彩り綺麗なサラダ。

食欲をそそられながらも、僕は口にするのを躊躇していた。


理由は、味覚障害。
三年前、目が覚めて初めて食事を口にした時から、僕には食べ物の味がよく分からなくて……。無理に噛んで飲み込もうとすれば、気分が悪くなって吐き戻してしまうのだ。

お医者さんからは、精神的ストレスが原因だと言われた。
だから普段はあまり噛まなくても飲み込めるスープ系だったりリゾットだったり、口当たりの良い果物しかほとんど口にしていない。


もし、また吐いてしまったら?

そんな不安を抱えながらスプーンを握ったままでいると、そんな僕をじっと見つめている視線に気付く。
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