夢の言葉と約束の翼(上)【夢の言葉続編⑤】
……カッツーン!!
僕の耳に響く金属音。
我に返ると、ボーッとしていた僕の手から離れたスプーンが床に落ちていた。
「!……あ、っ……すみませんっ」
「いえ、大丈夫です!
すぐに新しい物を用意しますから」
僕よりも早くそれに気付き機敏に席を立ったアカリさんは、落ちたスプーンを拾うと取り替えてくれる為にキッチンの方へ消えて行く。
その後ろ姿を見つめながら、今度は羞恥で顔に熱が高まるのを感じた。
自分が格好悪いのも情けないのも知っている。
大人の男性になんて程遠い事も自覚している。
それにしても、呆れる程に馬鹿丸出しの自分。
特に今日は、何だか変だ。
いつも以上に自分がどうしたいのか、自分の事が分からなくなっていた。
とりあえず落ち着こうとコップに注がれていた水を一口飲み深呼吸すると、食卓のすぐ側の床を二匹の猫が駆けて行った。
逃げる白猫リディアちゃんを、小さな黒猫が追いかけじゃれ合っている。