夢の言葉と約束の翼(上)【夢の言葉続編⑤】
「っ……マオ、さん?」
「!っ……幸せ、ですよッ!僕はッ……幸せですっ!!」
心配そうに声を掛けようとしてくれたアカリさんの言葉を遮って、僕は叫んだ。
でも、言葉とは反対に止まってくれない涙。
微笑む事が出来ずに、動揺した心。
乱れた想いの中に浮かぶ、僕の記憶。
祖父がいて、弟がいて……。
そう、僕には家族がいる。
いつも笑顔で、こんな僕を必要としてくれる優しいミネアさんって婚約者がいる。
衣食住の整った、何不自由ない暮らし。
仕事だって、たいして何も出来ないのに与えてもらえて……。
それなのに、それなのに……。
心はいつも、空っぽな気がしてた。
僕には充分過ぎる位に恵まれていると思うのに、何故こんなにも満たされないのだろう?
僕はこれ以上、何が欲しいと言うの?
自分の事すら分からなくて、僕はずっと暗闇に立ち止まったまま。