夢の言葉と約束の翼(上)【夢の言葉続編⑤】
もう寂しくならないように、未練を残さない為に、ヴァロンとの最後の時間を望んだ。
”すごく美味しいです。
今まで食べた物の中で、1番!”
あの言葉が聞けただけで充分だと思ったのに、彼は泣いた。
あの涙が持つ意味の全てが解る訳じゃない。
けど、今の生活が幸せだから故に流れた涙じゃない事くらいは解る。
そして、それだけで私には彼を忘れられない理由になるの。
ヴァロンは、私の前で泣いてくれた。
束の間だけど、私を頼って甘えてくれた。
まだ、私に出来る事があるのではないかと思う。
都合の良い、解釈。
そうかも知れない。
結局、自分の諦め切れないヴァロンへの想いを正当化する理由を探しているだけなのかも知れない。
ーーでもね。
そんな私の背中を、押してくれる人がいたの。