夢の言葉と約束の翼(上)【夢の言葉続編⑤】

一ヶ月程前に、私の兄である”マオ”が元妻であるアカリ様と再会をした事はミネア嬢に聞いて知っていた。

しかし、その後の兄を見ている限り、それがキッカケとなり記憶が戻る気配はない。
それに、再会を果たしたところでアカリ様には私の祖父シャルマとの約束がある。
元夫が側にいると分かったところで、何も出来やしない。

そう思っていた。


それなのに、アカリ様は何故この場に?
ミネア嬢を訪ねてきたのだろうか?

疑問を抱きながらも自らが話をすすめるべき事ではないと判断した私は、正面に座るアカリ様を見つめていた。

すると、少し俯くようにしていたアカリ様は顔を上げてミネア嬢を見る。


「今日は、お伝えしたい事があってきました。
……私は、やっぱりヴァロンの事が好きですっ。忘れる事なんて、出来ません!」

沈黙を破ったアカリ様の言葉に、私は思わず心の中でやれやれと愚痴をこぼした。
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