夢の言葉と約束の翼(上)【夢の言葉続編⑤】
一人の男を取り合う女の修羅場。
私はこの世で、これ以上醜いものはないと思っている。
我が母と兄の母が、父を奪い合った醜い感情。
恋だとか、愛だとか。
綺麗な言葉にしているだけで、私にとってそれは”醜い感情”でしかなかった。
だから私は”特別”だれかを想ったりはしないし、ましてや想われたくもない。
いずれ妻を娶り、世継ぎを設けるという事は避けられない現実だという事は理解している。
が、相手にそれ以上は求めたりしない。
子供さえ産んでくれれば、私にとって後はどうでもいい事だった。
三年前。
アカリ様を捕らえ監禁した際は、彼女の真っ直ぐな想いに僅かながら心動かされた事もあった。
それは事実。
けれど。
こうしてわざわざ赴き、ミネア嬢に宣戦布告をし、穏やかな今の生活に波風を立てようとする。
それ故に泣き、傷付く子供達の事を考えもしない。
結局、アカリ様も”醜い感情”の持ち主なのだ。