夢の言葉と約束の翼(上)【夢の言葉続編⑤】

「……それは、”わたくしからマオ様を奪う”という宣戦布告のつもりかしら?」

巻き込まれるのは御免だ、と席を立とうとした私の横でミネア嬢が問う。

聞くまでもない返答。

の、筈なのに……。
アカリ様の言葉が、私をその場に留まらせた。


「いいえ、それだけです」

「!……え?」

「私は、何年経っても……。
いえ、例え生まれ変わってもヴァロンが大好きなんだって……。言いたくて、きました」

控え目だが、真っ直ぐに自分の気持ちを口にするアカリ様の言葉と姿に、度肝を抜かれたのは私だけではなくミネア嬢も同じだろう。

黙っている私達の前で、アカリ様は言葉を続ける。


「ミネアさんはこの前、私に全てを話してくれました。
……でも。私はあの時、1番大切な素直な気持ちを何一つ伝えていなかった。
守る事に必死で、誤魔化して、逃げていたんです」

嘘偽りのない気持ちが、アカリ様の瞳から溢れミネア嬢に向かっていた。
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