夢の言葉と約束の翼(上)【夢の言葉続編⑤】
ホテルの廊下を一歩一歩進む度に、先程のアカリ様を思い出して胸が騒ぐ。
忘れ去っていた、幼い日の感情。
欲しい物を見付け、胸を弾ませた時によく似ていた。
ーーけれど、少し違う。
むず痒いような、心が暖かい、そんな気持ちに表情が緩む。
早足になるとホテルを出て、待たせていた車に乗り込み、自分を迎えた秘書に告げる。
はやる気持ちを抑え、ゆっくりと。
「……決めたぞ。私もそろそろ身を固める。
ただし、相手はアルバート様の孫娘アカリ様だ。それ以外は認めん」
秘書は分かりやすいぐらいに目と口を開いて、唖然としていた。
それが私の発言に対してなのか、珍しく上機嫌で笑顔を見せたからなのかは不明だったが……。そんな事はどうでもいい。
初めて女性に対して芽生えた気持ちに、私は鼓動を高鳴らせていた。