夢の言葉と約束の翼(上)【夢の言葉続編⑤】

「ボクも、ヴァロン様の事をずっと凄い人だと思ってました。
……でも。
あの方の過去を知って思ったんです。
誰だって初めから強い訳でも、綺麗な訳じゃない。たくさん傷付いて、醜い思いや苦しい事を知って……研ぎ澄まされていくんだって」

そう声をかけてくれたレイさんに、地面の砂を固く握り締めるようにしていた手を握られた瞬間。

私は何故だか、彼から瞳を逸らせなくなっていた。


「ユイさんは知ってるじゃないですか。自分の弱さも、醜さも……。
確かに傷付くのは、とても痛くて辛い。
でもそれは、心があるから感じられる。
弱さだって、ユイさんの強さの一部なんですよ?」

彼の一言一言が、今まで勘違いして、勝手に思い上がっていた私に気付かせてくれる。

独りで塞ぎ込んでいた暗闇に、光をくれる。


「っ……弱さも、強さの一部?」

「そうです!
それに、本当に醜い人はこんなに苦しんだりしません。
貴女は誰よりも優しくて、心の綺麗な人ですよ!」

私に向けられる真っ直ぐで頼もしい声が素直に嬉しくて、今までずっと独りぼっちだと思っていた心に響く。
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