夢の言葉と約束の翼(上)【夢の言葉続編⑤】
だから、私から言う事は何もない。
マスターとして、これまで人の夢を叶え続けて来た配達人やそれをサポートしてきた調査員が、今度は己の夢を掴めるように新たな門出を見送るだけ。
それが、マスターである私の務め。
リディアが去り、ヴァロンが去り。
レナとレイが去った今、ユイがいなくなればリディアとヴァロンと私を繋ぐものは、もう何もなくなる。
その現実に寂しさを感じるが、これはどうしようも出来ない事。
そう、言えない想いを封じた私。
けれど。
変わらない絆は、確かにここにあった。
「マスター、違うんです!
私は調査員を辞めたりしません!これからも、ここで働きたいんです!」
「!……え?」
ユイの言葉に、耳を疑う。
しかしそれと同時に、マスターではなく私自身の気持ちが溢れて口が自然と開いた。