夢の言葉と約束の翼(上)【夢の言葉続編⑤】
「何故、ですか?」
久しく忘れていた気持ちが甦ってくる。
大切な二人が残してくれた光に心を照らされるようにして、素直な、私の問い掛けが溢れた。
「ヴァロンを、取り戻したくはないのですか?
レナとレイと一緒に、アカリさんの手助けをしなくてもいいんですか?」
その質問を聞いて、ユイは微笑った。
ハッキリと表情が見えた訳ではない。
答える声と、雰囲気が、彼女が笑顔である事を教えてくれる。
「私はまだ、何もしていませんから……。
自分で決めて調査員になったのに、まだスタートラインに立っただけなんです。
こんな中途半端な私が、もしヴァロンさんを取り戻す事が出来ても……呼べませんから。
……”お父さん”、って」
お父さんーー。
それはユイの口から、初めて聞いた言葉。
そして。
そう言った彼女の凜とした声の張りが、ようやく自分の気持ちに整理がついた事を告げていた。