夢の言葉と約束の翼(上)【夢の言葉続編⑤】

予想外の出来事ですっかり動揺してしまった。
心臓がバクバクと音を立てている。

きっと、あの店員さんは僕の事を怪しいと思ったに違いない。
そう思って、商店街のショーウィンドウに映る自分をチラッと見た。

センスがないからどんな服装をしていいのか分からなくて、仕事もないのに今日はスーツ姿で来てしまった。
近くに海があるから多少風は涼しいが、やはり時刻によっては暑い。

しかも、慌ててしまったからか余計に暑くて汗が出てくる。


どうしようかな?
アカリさんの自宅を知らない訳じゃないけど、家まで押し掛けるのはさすがに馴れ馴れしく思われるかな?

そんな事を思いながら、額の汗をスーツの袖で拭った時だ。


「マオ、さん?」

!!……この、声は。

一度聴いたら忘れない、美しい声。
声のした方に目を向けると、長い黒髪を風に揺らしながら……。
僕が今、1番会いたかった人がそこに居た。
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