夢の言葉と約束の翼(上)【夢の言葉続編⑤】

「もうっ、ヒカル。
この間、広場で会ったお兄さんでしょ?」

「あ、”お兄さん”なんて……。
もう、結構な年なんです。おじさん、でいいですよ」

彼女が息子さんを注意する言葉に、苦笑いしながら訂正を入れた。
記憶を失っているせいなのかよく分からないが、どうも僕は実年齢より若く……。というか、幼く見えるらしい。

よく”お兄さん”って言われるけど、”おじさん”の間違い。


……そう。
僕はただのおじさん。
年齢ばかりが上を行っていて、中身は子供のようなおじさん。

分かっている事なのに、口にしたらやはり余計に虚しくなった。

目の前の、素敵な奥さんや可愛いお子さんを養える存在には到底なれない。
あっちの世界には、どう頑張っても行けない。

目の前のアカリさんとお子さん達が、なんだか違う世界の人間に思えて仕方なかった。


同時に、このままミネアさんと結婚してもいいのかとも思い始める。

彼女が必要としてくれるなら、微笑ってくれるなら、傍にいようと思った。

……けど。
本当に、それでいいのかな?


ボクハ、ココニイテ、イイノカナ?


昔誰かに、言われた気がする。

「なんであんたなのよ!」って……。
必要じゃない、って言われた。
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