夢の言葉と約束の翼(上)【夢の言葉続編⑤】
遊び場へ駆けて行ったヒナタちゃんとヒカル君に視線を向けるアカリさんをチラッと見た後、僕は彼女が朗読していた絵本を手に取った。
海賊ジャスパーの冒険。
子供向けの10ページ程の絵本。
パラッとページをめくって見つめながら、先程アカリさんが読んでくれた内容を思い出す。
現実ならばあり得ない、と思わせてくれる不思議なお話。
でも、そんな話だからワクワクする。
だって、絵本だもん。
読んでいる時くらい、夢をみたい。
こんな事があるんだよ。って、嘘でも思いたい。
「そんなに気に入りましたか?その本」
「えっ?……あ、いや……っ」
いつの間にか僕の方を見ていたアカリさんの笑顔にドキッとして、慌てて絵本を閉じて俯いた。
『なんだこれは!
絵本が好きなんて、大の男がみっともない!
こんな物ばかり読んどるから、いつまで経っても成長せんのだ!』
古本屋で買い集めて来た絵本を、祖父にはそう言って全部捨てられてしまった。