夢の言葉と約束の翼(上)【夢の言葉続編⑤】

……でも。
この時の僕には、この感情の名前が分からなくて……。

こんなにすぐ近くに、僕の探していたものがあるなんて思わなかった。

”自分の居場所”に、僕は還ってきていたのに……。

僕は、まだ気付けなくて。

それが後に、彼女達に流さなくてもいい涙を流させてしまう結果になる事にも……。

……
…………。


「も〜わかった!一緒に遊ぼう!
マオさん、すみません。絵本はまた今度でもいいで……」

「すか?」と語尾を小さな声で言ったアカリさんが、僕の方を見て、目を見開いた。


一方の僕は、目の前に広がっていた愛おしい家族のやり取りを見て、思わず口元に手を当てて、笑っていたんだ。

可愛くて、愛おしくて、自然と込み上げた幸せに、心からの笑顔が溢れる。

今の僕《マオ》の奥で眠ってる昔の俺《ヴァロン》が、無意識に目覚めて、笑ってた。
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