夢の言葉と約束の翼(上)【夢の言葉続編⑤】
ボクにはすぐにその女性が誰だか分かった。
ヴァロン様に似た女性は、間違いなくユイさん。
久々に見る彼女は、以前は左右二つに分けておさげにしていた長い黒髪を、バッサリ短く切ってショートカットにしていた。
そんな彼女の容姿に驚かされたのはもちろんだが、今はそれよりも……。
「迷惑だって言ってるのが分からないのッ!?
そんなに女を口説きたいなら、調査員辞めてホストにでもなればっ?
……ま、あんたみたいな男。どうせどこに行っても中途半端でしょうけどね!」
ユイさんはそう言い放つと、彼女の勢いに圧倒された男をフッと鼻で笑うようにして、奥のロッカールームに消えて行った。
ユイさんはすっかり変わっていた。
おっとりとして、ほんわかして、礼儀正しくて控え目な……。
そう、花のようだった彼女はもういない。
これが、ボクが耳にしていた悪い噂。
でも、噂ではなく事実なんだと実感した。