夢の言葉と約束の翼(上)【夢の言葉続編⑤】

無邪気で可愛い子供達。
でも、まさか”マオさん”にこんな事をしてしまうなんて……。


「ーーすみません!
ス、スーツ!ずぶ濡れにしちゃって……っ、あの……」

”どうしよう”と、顔が青ざめる。

こんな事、いくら何でも初対面に近い……。と言うか、彼にとって今ヒナタとヒカルは”他人”も同然の存在。

そんな子供にこんなイタズラをされて、何とも思わない人なんている訳ない。

とにかく謝らなきゃ!と、心配になる私だった。
が……。

ーーそれは取越し苦労。


「……フッ、っ……あははははっ!!」

「!っ……え?」

マオさんの反応に、持っていたタオルを鞄から取り出し渡そうとしていた私は驚いた。

彼が笑ってる。
イタズラされたのに、すごく嬉しそうに笑っていたのだ。


そして……。

「ーーははっ、やられた〜。
こら〜っ、ヒナタちゃん!ヒカル君〜!!」

「きゃーっ!」

「にげろ〜っ!」

マオさんは伊達眼鏡を外して、濡れて額にくっ付いた前髪をかき上げると、意地悪そうにも見える笑顔で逃げる子供達を追いかけ始めた。
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