夢の言葉と約束の翼(上)【夢の言葉続編⑤】
ここは実は、ヴァロンとの想い出の場所の一つだった。
桜が舞い散る、人気の少ない明け方に、ヴァロンが私に結婚指輪をくれた場所。
「っ……」
ダメ。
思い出してはいけない。
そう思うのに、また想い出の中に愛おしい人を探して私は迷ってしまう。
少し前を歩くユウさんの背中すら、まともに見られない私。
すると……。
突然ユウさんが立ち止まったと思うと、振り返って俯いていた私に声をかけた。
「今日は、大事な話があるんだ」
いつもにない真剣な口調。
思わずハッとして顔を上げると、そこには真っ直ぐ私を見つめるユウさん。
「っ……だ、大事な……話?」
ドキンッと跳ねる鼓動。
聞き返しながらも、本当はユウさんの言いたい事が私には分かっていたんだと思う。
ただ、聞きたくなくて……。
それを言われてしまうのが怖くて、分からないフリをしたかった。
言われてしまったら、拒めない。
今更私には、断る権利なんてないのだから。