夢の言葉と約束の翼（上）【夢の言葉続編⑤】

【ユウ28歳/港街外れの並木道】

”なぜ、知ってるの？”

言葉にしないけど、僕を見つめるアカリの表情がそう言ってる。

小刻みに震えてる、少女のような彼女を抱き締められるのが……。
その瞳から流れる涙を拭って止められるのが、僕だったらいいのにと何度思ったか分からない。


けれど、残念ながらその役目が出来るのは自分じゃない。

分かってた。
アカリの心の中にずっといる人物が誰なのか。
だって、あの人は僕にとっても忘れられない人だから……。


「……覚えてる？
僕とアカリがこの港街のパン屋さんで再会して、暫くしたある日。
アカリが指輪を失くした事があっただろ？」

あの時の事を思い出しながら、僕はゆっくりと話し始めた。
驚いた表情だったアカリは更にキョトンとしていて、今更なぜその話をするのか分かっていない様子だった。

その表情を見て悟る。
彼女は何も知らないのだと……。