夢の言葉と約束の翼(上)【夢の言葉続編⑤】
ヴァロンがいなくなってから駆け抜けるようだった時間が、再びゆっくり刻みになりだした自分の生活。
すっかり彼との想い出が、心穏やかに思い出せるようになっていた。
この広場も、買い物がてらヴァロンと散歩した事がある想い出の場所の一つ。
だいぶ雰囲気は変わってしまったけど、あの時からあるいくつかの出店と噴水。
一緒にクレープを食べて、ヴァロンがこの噴水にある言い伝えを教えてくれた。
”噴水に背を向けて10歩歩いて、そのまま振り返らずコインを投げて、中央の小さな受け皿に入ったら何でも願い事が叶うんだ”って……。
「やってみる?」って言われて、あの時は「無理だよ!」って断ってしまった。
だって中央の受け皿って本当に直径10㎝位の小さなもので、ヴァロンですら成功した事がないなんて言われたら、とても自分では入れられないと思った。