夢の言葉と約束の翼(上)【夢の言葉続編⑤】
ヴァロン、もう一度貴方に逢いたい!!
10歩歩いて足を止めると、私は両手でコインを握り締めて祈った。
その時サァッと吹いた風が、私が鞄に付けていたお守りの猫バロンの鈴を鳴らす。
「奇跡のカケラは、自分で掴まなきゃダメだよね?」
キッカケというカケラを自分で掴んで、初めて奇跡という力に変わる。
昔、自分が言った事だ。
もう、迷わない。
私は身体の力を抜いて、どう投げたらいいか、とか余計な考えも省いて……。
コインを、自分の背にある噴水に向かって、投げた。
……
…………。
目をギュッと閉じて、噴水の中に落ちるコインの音に耳を澄ませていると……。
「ママ〜!!たいへん!!」
「!……えっ?」
聞き覚えのある声に、思わずハッとして目を開ける。
その直後に目に入ってきたのは、慌てて私の脚にしがみ付く娘のヒナタの姿だった。
「ママ〜たいへんなの!
ヒカルのなげたボールが、おにいちゃんにあたっちゃったぁ〜!」
突然の事で、状況がすぐに理解出来ない私。
娘が指差す方にゆっくり視線を向ける。