夢の言葉と約束の翼(上)【夢の言葉続編⑤】
「気にしないで下さい。……ね?」
黒に近い灰色の髪と瞳の男性が、そう言って私にぎこちない微笑みを見せる。
呼吸が、一瞬止まる。
それなのに、鼓動が高鳴って、熱くなる。
私の全身が”この人だ!”って、”やっと逢えた”と騒ぎ始めた。
忘れるはずのない、間違えるはずのない、声。
私は彼がどんなに姿を変えていようとも、必ず見付ける事が出来る。
目の前にいるのは、ヴァロン。
ヴァロンが、目の前にいる。
……けど。
何か少し、様子が違う。
「あ……、っ……」
「?……大丈夫、ですか?」
戸惑う私の反応を見て、男性は心配そうに首を傾げた。
その表情は、まるで私の事なんて覚えていないような……。いや、知らない人を見るような眼差し。
ヴァロンじゃ、ないの?
似ている、だけ……?
口からなかなか出せない問い掛けが、私の心の中で震えながら寂しく響いていた。
……
…………。