夢の言葉と約束の翼(上)【夢の言葉続編⑤】
「いえ、大丈夫です。
僕もボーッとしていたので、お互い様ですよ。
……ちゃんと謝れて、偉いね?」
男性はヒカルの目線に合わせて屈むと、大きな手で頭をポンポンと優しく撫でた。
その様子に、私は分からなくなる。
私達に、気付いていないの?
そう心の中で問いかける。
何か事情があって、他人のフリをしている?
ヴァロンが夢の配達人だった頃なら充分にあり得たが、今の状況や境遇でまでそんな事を貫くほど薄情な心の持ち主ではない事くらい分かっている。
ならば、一体なぜ?
この男性の傍にいて高鳴る私の鼓動は、間違いなのだろうか?
そう思えば、ヴァロンと目の前の男性はとても似ているが違うところもあった。
その場にいるだけで変装していても存在感が溢れ出るようだった以前の彼に比べて、目の前の男性はどこか頼りなさ気というかおっとりしているというか……。悪く言えば、ボーッとしている人に等しい。