夢の言葉と約束の翼(上)【夢の言葉続編⑤】
じっと見つめている私と目が合うと、泳がせるように視線を逸らされてしまうし、何だかオドオドとしている。
射るような強い眼光を放っていたヴァロンとは、全く違っていた。
それに……。
頑張って微笑もうとしているけど、その笑みはどこかぎこちなくて、寂しそうに見える。
まるで笑い方を知らない子供のように幼く、私の瞳に映った。
「これ、伊達眼鏡なんで本当に気にしないで下さい。
……では。……」
「!っ……あ、あの!」
立ち上がった男性は軽く一礼すると、私達に背を向けてその場から去ろうとする。
彼が行ってしまう!
私はハッとして呼び止めると、ドキドキする鼓動を必死に抑えて、ダメ元で呼んでみようと思った。
”ヴァロン”って……。
そしたらきっと、答えが分かると思った。
しかし。
私の呼び掛けにゆっくり振り向く男性に、その名を呼ぼうとした瞬間。
「マオ様ッ…!!」
と言う可愛らしい声を発した女性が、私の目の前の男性に抱き付いた。