ひとり戦場に行く君へ



でもそれは出来ない。



泣き叫んで、怒り狂ってる人が沢山いた。



息子を、兄弟を、恋人を、奪われる悔しさを、みんな口々に叫んでいた。



そんな中を、わたしに行けるというのか。



家族でも、恋人でもないわたしに。



この人混みを蹴って行く勇気が、あるというのか。



不思議と涙は出ていなかった。頭がボーッとした。



笛が鳴った。



ああ、行ってしまう。



そう思っても声が出ない。



ひたすら見続けた。船に乗る彼らを。



君を。




< 5 / 30 >

この作品をシェア

pagetop