悪魔の囁きは溺愛の始まり
悪魔の囁き
外を歩けば汗が自然と吹き出してくる。日傘で直射日光を避けてはいるが暑いのは変わらない。


「今日は一段と暑くないですか?」

「そうだね。お嬢様育ちの青山にはキツいか?」

「お嬢様って……、違いますよ。ちゃんと夏に外ぐらい歩きます。」

「そうなのか?青山インテリアのお嬢様には夏の出先は厳しいのかと。」


クスクス笑いながら話す上司の渡部慎弥(わたべ しんや)が、私を茶化しているのが伝わってくる。

私はチラリと隣を歩く渡部さんを日傘を傾け見上げる。


「一社員ですよ。通勤も電車ですし、普通の社員と変わりません。」

「ははっ、知ってる。青山は真面目だから……ついな。」

「ついって。」


半分呆れて溜め息を溢した。


「お嬢様、もうすぐ到着します。」

「渡部さん!」

「ははっ。」


お嬢様………そんな風に呼ぶのは渡部さんだけだ。一年先輩の彼は私の教育係だ。

それからずっと彼の下で一緒に仕事をしていて、もう4年目になる。
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