悪魔の囁きは溺愛の始まり
「青山、会議室だ。資料の確認する。」

「あっ、はい。」


席を立ち上がる渡部さんの雰囲気が怖い。怯む事のない濱田さんが私達に手を振る。


「大きなプロジェクトなんだから頑張って。渡部くんも向上心が半端ないんだから。」

「………。」


無視して歩く渡部さんの後を追い掛ける。

『向上心?』

確かに仕事人間な気もする。

渡部さんは出世を狙ってるって事なの?

渡部さんの背中を追い掛けながら、頭の中ではそんな事を考えていた。

会議室には渡部さんと二人だけだ。

静かな会議室に渡部さんの声が響く。


「言っとくが勘違いするな。別に出世したいから青山を『好きだ』と言ったわけじゃない。」

「えっ?」

「逆だ。青山を好きだから出世したいんだ。少しでも認めて貰いたいから。」


渡部さんの言いたい事は理解した。

でも絶対に父は渡部さんとの付き合いは認めない。


「渡部さん、父は渡部さんを認めないよ。仕事じゃなくて恋愛の事だけど。」


渡部さんと視線が合うが、私の言いたい事がよく分からないようだ。
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