悪魔の囁きは溺愛の始まり
「親父が気にしてる。」

「うん。」

「外泊してるらしいな。」

「えっ?あっ、うん。」


蒼大さんの部屋に泊まったのがバレてる?

いや、急に彼氏とかの噂で暗に想像しただけなのかもしれない。


「一花の恋愛は自由だが、会社経営している立場からすれば、見極めておきたいとも思う。」

「うん。」

「一花、このプロジェクトが成功したら、渡部を一花の上司から外す。」

「えっ?」


突然の事に驚き、バッと兄を見上げる。

冷静な経営者としての兄が私を見下ろす冷たい視線を感じる。


「渡部を一花から離す。これは社長である親父の判断だ。」

「なんで?」

「親父が最も危惧しているのは社内恋愛だ。渡部の噂を聞いた親父の判断だ。」


兄が立ち上がり休憩室を出ていこうとした。

その背中に私は問い掛けた。


「渡部さんには『もっともっと色々な知識を学びたい』とお願いしても無理?」

「無理だ。」


兄が休憩室を出ていく。

その背中をきっと冷たい目で見ていたに違いない。
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