悪魔の囁きは溺愛の始まり
「きゃっ!」

「一花!」


兄の大きな声が響いた。

腕を掴まれ、目の前に立つ人を見て驚きが隠せなかった。


「蒼大さん?」


目の前には蒼大さんが立っていた。

兄が慌てて車から降りてきた。


「一花!」

「大丈夫。」


蒼大さんの鋭い視線が突き刺さっているが、私は兄に微笑んで安心させた。


「蒼大さん、どうして?」

「少しでも一花に会えれば……と。ちょうど連絡しようとしたら、車に乗る一花が見えたんだ。」

「『今日は無理』って連絡したよね?」

「誰?家に送ってもらう仲なのか?」


蒼大さんが兄を睨むように見た。

兄は平然とした様子で、私と蒼大さんの成り行きを見ている。

蒼大さんは完全に誤解をしているようだ。


「兄なの。同じ会社で副社長してるから送ってもらったの。」

「兄?」

「そう。会ったことない?」


蒼大さんが驚いた表情を見せた。

兄が私達へ近づいてくると目の前で立ち止まった。
< 113 / 200 >

この作品をシェア

pagetop